課題別取組みのヒント
業務短縮・効率化
業務の無駄や重複が多い
決裁や、それに伴う資料作成等に時間を取られ、本来の業務に負荷がかかっている。
組織運営・決裁権限を見直す
現在の組織のあり方を再度検討し、特に決裁権限について企業経営上の観点、リスク対策、事業運営の効率性の観点などから簡素化を図り、業務の効率化につなげる。
会議が多い、または長時間になる傾向があり、個人の業務に負荷がかかっている。
また、会議が効果的に行われていない。
会議の目的を明確にした上で、会議省略の検討や会議開催・進行の効率化を行う
会議の前に、その会議の目的、議題、決めるべきことなどを明確にして会議参加者に伝える。また、参加者は、「貴重な時間を最大限有効に活用する」という意識を持って会議に参加する。これに加えて、必要に応じて会議の省略を検討したり、決められた会議時間内に意思決定をする、会議に提出する資料枚数の上限を定める等、効率化のための具体的なルールを設定する。
営業職や製造業、工事業などで、日中は現場で業務を行い、夕方事務処理等を行うために残業することが多い。
事務処理業務の効率化
現場業務の終了後に実施する事務処理業務について、文書作成の内容を必要最小限に絞ることや、チェックリスト方式を採用するなど業務時間の削減につながる手法の導入を検討する。その上で、事務処理にかける時間を、例えば1時間以内に終えるなどのルールを設定し徹底することで、効率化に向けた工夫を行う。
成果物(アウトプット)の品質を過剰に追求する
企画業務など、成果物の質の水準が明確でない業務もあり、残業を増やす要因となっている。
仕事の完成・成果の基準の明確化
必要最小限の業務時間において一定の品質を達成することを原則とし、成果の基準についても、最終的に生み出した付加価値を指標とするなど、できる限り明確化する。
社内向け説明資料について、必要以上に質の高い資料を作成するために、手間がかかっている。
社内資料の内容について再検討を行い、資料内容の簡素化及び枚数上限設定
社内資料の内容について、検討を行い、簡素化・標準化や資料枚数の上限の設定について検討する。
優先的な業務の仕分けができていない、業務量の調整が難しい
採算性の低い業務に時間を取られ、より付加価値の高い業務に人的資源投入を集中させることができていない。
受託する業務の採算性や特性による選別受注
発注される業務について、採算性や納期などの特性を把握し、一定の基準の下に選別受注を行う。これにより、採算性の低い短期業務の受注に伴う所定外労働の抑制につなげる。 具体的には、業務に係る人件費の原価計算の際に、所定外労働を行わず、かつ年次有給休暇を完全に取得した場合の人件費や納期を計算し、それらを基に見積りを行い、見積りと発注条件とのギャップを一つの判断材料とする。
自社および取引先の組織風土が影響し、年次有給休暇の取得を考慮した業務の進め方ができていない。
また、顧客の仕様変更が少なくないこと、要求レベルが高いことが、業務負荷の要因となっている。
経営トップによる顧客への働きかけ
顧客とは共存共栄の道を探る必要があり、一方に負荷がかかり疲弊することは、持続的な関係を阻害する要因となる。このため、発注者と受注者という関係の下では、現場レベルでの交渉には一定の限界があることから、トップから顧客に対し、スケジュールを十分に確保し、過大な業務の発生を防止するよう、働きかけを行う。
IT化(効率化)に対する忌避感がある
業務効率化のためにIT機器を導入したいが、IT機器に対する忌避感が強い社員が多く導入が難しい。
IT機器に対する忌避感がある社員向けに、通常のマニュアルとは別の簡易マニュアルの作成や、研修の開催を行う
一般的にマニュアルは、全ての機能について網羅する必要があり、作成が難しい。現場で日々使用する機能に特化したマニュアル(図付き)を作成し、手順通り行えば紙によるレポート作成と変わらず、時間場所を選ばず報告ができるメリット等も伝えつつ、IT機器に対する忌避感がある社員にも導入を図る。研修機会も設けられると良い。
柔軟な働き方・休み方
子育て・介護・病気治療と仕事の両立が難しい
結婚・出産、介護や病気療養を機に従業員が離職したり、キャリアが制限されることが多い。
ライフイベントに応じた柔軟な休暇制度の設定や、勤務時間選択制度、テレワーク導入などの柔軟な働き方の推進を行う
時間単位での育児看護休業を自由に選択できる制度や、介護休業の分割取得、失効する年次有給休暇を60日まで積み立て、特別の事由がある場合に利用可能な「積休」制度など、ライフイベントに応じて柔軟に休暇を取得できるように制度を整える。
また、時間や勤務場所に制約がある従業員も働き続けられるよう、個々の事情に応じて複数のパターンから勤務時間を選択できる「勤務時間選択制度」や、ICTを活用したモバイルワークや在宅勤務などの「テレワーク」の導入など、柔軟な働き方の推進を行う。
人事異動や育児休暇、介護休業等の際に、業務の引継ぎによって周りの従業員に負荷がかかっている。
業務引継ぎの効率化
異動や育児休暇等の際に、引継書を作成して、引継ぎ時の負担軽減を図る。
引継書は、業務全体が俯瞰できるものとし、業務の流れ、社内外の関係者とのつながり等を明示する。また、資料については、資料一覧と格納先をリストアップし整理しておく。引継書の作成手順については、過去に作成したものをベースに、より効率的に作成できるよう、平準化や改訂を行う。
休暇が取得しにくい
休暇取得についての社員の意識や意向がわからないため、どのような施策を打てば良いかわからない。
社員意識調査による休暇に対する意識の収集、分析
社員の休暇取得に関する意識をアンケートや面談等で調査し、結果を分析する。社員の休暇に対するニーズや休暇の取得が進んでいない理由等を参考に、取得日数の底上げを図るための対策を講じる。
勤務時間や店舗等の営業時間について、ニーズに関係なく、従前からの慣行で、長く設定している。
顧客のニーズ調査とそれに応じた勤務時間、営業時間の見直し
顧客のニーズを調査し、ニーズに応じて勤務時間・営業時間を見直したり、フレックスタイム制を導入するなど、現在の業務の量や質などを分析した上で営業方針を検討する。
繁忙期、閑散期に関わらず、年初に立てた計画に基づく休暇以外の休暇は取得しにくい。
閑散期などを中心に年次有給休暇の計画的付与制度導入
年間計画に沿った休暇以外の休暇取得が難しい場合、閑散期を中心に、年次有給休暇の計画的付与制度を活用し、飛び石連休の間の出勤日を取得推奨日として連続休暇とする等、年次有給休暇の取得しやすい環境を作る。
人事・評価
長時間労働が評価される組織風土がある(あるいはあると感じている)
「成果を出すためには長時間労働も仕方ない」、「長時間労働が評価されるはずである」と考えている部署・個人が存在し、その結果、長時間労働が発生している可能性がある。
効率指標としての「時間あたりの成果」を人事評価項目に加える
「時間あたりの成果」を人事評価項目に加え、「時間」ではなく「効率性」で評価するように制度設計することで、社員の行動パターンの変化を促す。
仕事にやりがいを感じていたり、また早く帰っても特段やりたいことがあるわけでもなかったりと、従業員のワーク・ライフ・バランスに対する意識が低く、長時間労働や休暇を取得しないことに対して問題意識を持っていない。
人事評価項目にワーク・ライフ・バランス管理に関する項目を設定する
従業員の人事評価項目の一部に、自身のワーク・ライフ・バランス管理に関する項目を組み込む。
本人のモチベーション等にも配慮した上で、仕事の量、質、裁量度を考慮した上で所定外労働時間や年次有給休暇に関する個人目標値を設定し、達成度合いを人事評価にも反映させることで、社員全体のワーク・ライフ・バランスに関する意識を高める。
また、業務を効率的に遂行することができるように意識づけ、その行動を評価項目として評価することを検討する。
人材不足のため、一人あたりの仕事が多い
業種の特性上、働き方や就労環境の面で求職者から敬遠されている可能性がある。
家族・求職者向けイベントの企画・仕事内容のアピール
家族・求職者参加型の社員イベント、取引先協力の下での職場見学等を通じて、社員の家族や求職者へ同社業務の理解を促すとともに、社員にさらに自社への「誇り」を感じてもらえるよう工夫する。
全社的に社員が少なく、一人あたりの業務量を増やすことで当面の対応を行っているが、 今後人員確保がさらに難しくなると予想しており、会社の将来に不安を感じている
多様な人材を活用することを目的とした労働環境改善方針の策定と、トップによるメッセージ発信
人手不足状況においては、高齢者や女性の活躍が期待されていることから、人員確保のためには、多様な人材が働き続けることができる労働環境を整備することが必要である。このため、具体的な労働環境改善の方針を明確化し、トップからその方針について内外に発信することで、労働環境の改善を推進する。
意識啓発
トップ・管理職の意識が低い
働き方・休み方に関する取組みを実施したいが、経営層に取組みのメリットがない(業績ダウンにつながる)のではと指摘される。
働き方・休み方に関するデータと業績の関係や、組織単位の生産性等について分析を行う
働き方・休み方に関するデータと組織単位の業績や生産性に関するデータとの関係について、分析を行う。業績を維持または向上させつつ、ワーク・ライフ・バランスの取組みを進めている組織、年次有給休暇が取れている組織について、取組みがうまくいっている要因を分析し、それを社内に共有する。
長時間労働の削減や休暇の取得促進について、企業としての方針が明確に示されていないため、働き方・休み方改善のための取組みが進めづらい。
トップが所定外労働削減・年次有給休暇取得促進を徹底する方針について発信
全社で一元的な所定外労働削減、年次有給休暇取得促進の取組みを進めるためには、これらを経営課題の一つとして位置づけ、会社の経営方針の実現に重要であるという認識及び改善に向けた取組みの方針について、経営トップの全社に向けた発信が不可欠である。発信の媒体は社内イントラネットや社内報など様々な媒体を活用し、全社員に届くよう工夫する。
組織・職場の風土の影響が強い
管理職が長時間労働の傾向がある場合、部下も先に帰りにくい/休みを取りにくく、組織的に長時間労働となる傾向にある。
管理職の長時間労働を解消する仕組みの導入
管理職を対象とした定時退社推奨日、定時退社推奨月間の設定等、管理職に対して定時退社を促す仕組みを検討する。
所定外労働の実施が社員各人の判断に任されており、その結果「付き合い残業」が常態化している。
管理職による所定外労働の事前承認制を設ける
所定外労働を行う場合は、管理職への事前申請・承認を要することとし、部下は、終業時刻前に、
①業務内容と残業する理由、②残業予定時間を上司に申請するルールを設ける。
管理職は部下からの所定外労働の申請に基づいて、本当に当日実施することが必要な業務か否かを判断し、必要と判断した時間についてのみ承認することで、部下の長時間労働の抑制に繋げる。ルールの適用にあたっては、申請やチェックに手間がかかると考えるのではなく、長時間労働の抑制のためには、必要でない所定外労働を無くすための手続きが必要であることを伝える。
一般社員の意識が低い
従業員の意識が休暇取得よりも仕事に向いており、年次有給休暇を取得する意識が低い。
「記念日休暇」、「誕生月休暇」等のアニバーサリー(メモリアル)休暇を設ける。
就業規則に、「記念日休暇」、「誕生月休暇」等のアニバーサリー(メモリアル)休暇を規定し、制度化する。制度の運用にあたっては、記念日の対象となる社員をきちんと把握したうえで、該当者に希望日をヒアリングし必ず反映する、誕生月が繁忙である場合などは、前後の月への休暇の振替を前もって行うことにより業務への影響を最小限に抑えるなど、休暇の利用を促進するための柔軟なルールを定め、実行する。