取組事例紹介

「社員に訊く」姿勢で社員の挑戦を支援、変革を推進

#キーワード

スマートムーブ フリーアドレス ITの積極活用で良い行動の見える化 提案制度 自己啓発支援

株式会社アイペック

創業者の後を継いだ東出社長は海外経験があり財務畑に明るいが、専門外の非破壊検査や調査診断などの技術については社員に訊く姿勢を大切にしている。「とりあえずやってみる」という社風の下、制度がなくても要望を聴き、働きやすい環境づくりを取締役・総務部長の荒木氏と二人三脚で進める。新社屋プロジェクトメンバーだった社員の自主的な動きも頼もしく、声かけ運動やメンター制度・コーチング、フリーアドレス制、テレワーク、直行直帰の制度など、柔軟に取り組む姿勢と実績が効果を上げている。荒木氏は「煌めく~」の1期生として同期生とのネットワークを維持し、内勤の多い女性にも外部とのネットワークづくりを薦める。

直行・直帰で圧倒的に通勤の移動時間を短縮。

社員68名中、女性社員は15名と2割を占める。その半数は育児を経験し、時間有給制度、テレワーク、フレックスタイム、両立支援・職場復帰プログラムなどを活用し勤務を継続している。コロナ禍もむしろ業務革新の追い風になっているのでは?と思わせるほどの新しい制度への挑戦も目を引く。

2020年6月に、通勤時間の低減を目指して直行・直帰を推奨するスマートムーブ制度を導入。スマートムーブ手当も用意した。ういた時間は、資格取得の学習時間、お客様により良いサービスを提供する時間、家族との時間にあてるなど様々。その結果、車の総移動距離を日本縦断できるほど削減してSDGsにも貢献できたほか、時間的制約の大きい女性社員に好評で社員の精神的ゆとりを生んだ。 取り組みの背景には、2019年4月改正の働き方改革関連法案の施行がある。新社屋への移転を機に、オフィスのフリーアドレス制、SurfaceやiPhoneの貸与、クラウドでのデータ保存、基盤システムの改定、グループウェア、Microsoft365やLINEワークス等のコミュニケーションツールの活用など実績を重ねてきた。

変革推進のステップは戦略的に。

業務改革には、東出社長を中心に各部の部長とプレイヤーによる15名の新社屋プロジェクトメンバーの貢献が大きい。フリーアドレス制の先進企業を見学し、移転の1年前から12回のミーティングを行い、問題点と対策、家具の配置、検査機器や備品の配置など、移転後の働き方をイメージして議論を重ねた。また、コミュニケーションツール上で全社員が内容や進捗をリアルタイムで閲覧できるようにした。とはいえ、3年ほど前のフリーアドレス検討時には「文房具はいちいち取りに行くの?」「使い慣れたデスクトップパソコンをノート型にしないといけないのか?」「ゴミ箱は?」など、足すことは得意でも、引き算に慣れていない社員から、反対意見も多かったという。そこで、5S活動も同時に実施。徐々に不要なものと必要なものを選別し、文書の電子化も進めた。

移転後には、フレックスタイム制度(コアタイムなし)、勤務間インターバル制度、テレワーク勤務制度も導入。一筋縄ではいかない超過勤務の問題にはRPA(Robotic Process Automation)も検討中だ。

「声かけ運動」と「提案制度」は 双方向ツール。

フリーアドレス制の導入当初は、つい同じ席につきがちな社員には声をかけ、日々違う席を推奨してきた。「何か困ったことない?」「気づいたことある?」と、月に2回の「声かけ運動」を総務部主催で実施している。あがった声は匿名でグループウェアにUPし、役員が必ず回答する仕組みだ。

その記録を見ると、不満が多かった時期を経て、今では「こうした方が良いのでは?」という提案が増えてきた。当たり前のようにやってきた、ちょこっと改善提案やヒヤリハット報告も、グループウェアで見える化。他部署の朝会にも積極的に参加し、全員参加型のコミュニケーションがチャレンジの継続を促す。

「回覧はどうしよう?」そんな課題には技術グループの女性3人で知恵を絞り、定位置回覧システムを提案。宛名入りの手製ボードも活用して半年間で定着を図った。回覧物はトレーに置くと同時にLINEワークスでもフォローする。

メンター制度や自己啓発支援でひとりひとりが意欲向上。

1人に2人のメンターをつけるメンター制度やコーチングを受けられる制度も6~7年前から継続し、個人の成長や意欲向上を支援している。また、検査業務に必要な資格取得の支援も手厚い。合格祝金、公的ライセンス手当はもとより、合格すると受験費用(検定料、旅費など)は全額会社負担。不合格でも半額補助をし、次回の受験に挑んでほしいと考える。

2020年6月から自己啓発支援制度を導入し、複数人で1時間以上学習すると自己啓発支援手当を支給している。さらに、2021年4月から毎週水曜日17時~20時に自己啓発支援タイムを設定し、大会議室などを開放して各々学習できる環境をつくった。自宅で学習時間を取りにくい社員にも好評で、受験者数・合格率アップにも効果がでている。「自分ブランドの確立」を目標に、お客様目線で成長を目指す姿勢が、ひとりひとりに浸透しつつある。

社内に閉じない視野の広さで戦略的変革推進

荒木氏は「煌めく~」の1期生として同期生とのネットワークを維持し、内勤の多い女性にも外部とのネットワークづくりを薦める。社内に閉じない視野の広さが課題への優れたアプローチの原動力と言えそう。女性ならではの「当たって砕けろ的なアプローチで」という言葉にも共感できた。「社員ひとりひとりの可能性を無限大に活かし、健康でやりがいをもって仕事をしてほしい」と社員をリスペクトする東出社長と荒木氏のタッグが変革への挑戦エンジンとなっている。総じて自己変革が難しい日本の企業にあって、社員の意見を聴き、挑戦を引き出しながら戦略的に変革を進めるマネジメントが清々しい。全国にまん延する超過勤務の課題にも先進的な取り組みによる生産性向上を大いに期待したい。

コンサルタント:永合由美子

株式会社アイペック

  • 従業員数70名、平均年齢40.9歳、平均勤続年数11.4年、管理者数8人
  • 〒931-8453 富山県富山市中田1丁目113-1
  • 設立:1976年4月1日
  • 事業内容:構造物・⼟⽊の⾮破壊検査、調査、診断
  • https://www.ipec-com.jp/site/index.html