取組事例紹介

チーム体制で取り組む生産性の向上と選択的週休3日制度等の導入

#キーワード

属人化の解消 選択的週休3日制度 短時間勤務制度

株式会社中尾清月堂

明治2年創業、高岡市で150年以上続く老舗の和洋菓子店『中尾清月堂』。「和菓子を未来に連れていく」をパーパスに、伝統を重んじながらも、その手法にとらわれることなく、時代に即した新しい価値観と楽しみ方を創造しています。職人気質から工場生産へと舵を切り、社員の多様なライフスタイルに合わせて進めてきた働き方改革の取組みを、専務取締役兼工場長の伏脇さんにお伺いしました。

働き方改革に取り組んだ背景

働き方改革に着手したのは2017年からですが、その背景には3つのポイントがあります。

1つ目は、「和菓子市場の変化と職人気質による人材育成の限界」です。昨今は、スーパーやコンビニエンスストアなど和菓子がどこでも手に入り、差別化が難しい状況です。また、かつての和菓子業界は、個々の職人の技術に依存し、見て覚えながら経験を積んでいく、感性や長年の勘による製造手法が主流でした。しかし、働き手不足が深刻化し、古い体質での職人の育成や人材確保に限界を感じていました。

2つ目は、「女性社員のキャリア中断による人材流出」です。以前は、入社した女性社員の多くが、中核を担う人材として活躍できるタイミングで、結婚や出産と同時に退社していました。こうした状況に対し、当社の代表も「キャリアを諦めるのは、会社にとっても本人にとってももったいない」という懸念を抱いていました。

3つ目は、「2017年の工場リニューアルの契機」です。新たな製造現場の整備に合わせて、これまでの生産体制を抜本的に見直し、勤務制度と社員の意識改革を同時に進めました。2018年には、製造工程において不可欠であった職人の勘やレシピを、論理的・科学的根拠に基づいてデータで可視化しました。製造現場の機械化も進めて、属人的な生産体制からチームで生産性を高める体制に移行しました。

ライフステージに合わせた選択的週休3日制度等の導入

2017年にまず取り組んだのが、「選択的週休3日制度」と「短時間勤務制度」の導入です。ライフステージの変化に合わせた女性社員の支援が主な目的で、いずれも育児や介護などの事由を問わず、製造本部のすべてのスタッフが対象です。年間の繁閑に応じた働き方とするため、1年単位の変形労働時間制を適用しています。

選択的週休3日制度は、繁忙期を除いた定休日の水曜と日曜に加えて、任意の1日(生産性を安定させるため曜日は固定)を休日に設定することができます。休日は、年間で150日前後になり、減少する勤務時間に応じて給与を調整しています。希望があれば、週休3日から週休2日に戻すことも可能で、ライフイベントにあわせて柔軟に選択できます。

短時間勤務制度は、正社員としての週40時間の勤務制限を緩和し、週30時間以上、1日6時間以上であれば利用できます。また、2022年には、場所を問わず柔軟に働ける職場環境を目指して、デザイン・企画・事務部門の社員を対象にテレワーク制度を導入しました。

スモールスタートから制度を浸透

選択的週休3日制度等がスムーズに生産現場に浸透できたのは、既にいた従業員に大きな変化を求めたのではなく、新規採用者から制度の利用を促したためです。当社は、土日と繁忙期の商品を年間計画で生産しているほか、多品目の菓子を商品ごとに製造管理しています。そのため、新規採用者を含めた新しいチームの中で商品の種類と時期を限定して生産管理できたため、制度の適用にあたっても、現場の抵抗感を和らげることができました。特定のチームの中で良い効果が出れば、別のチームでも理解が進み、変化も肯定的に受け入れてもらえます。つまり、スモールスタートから成功事例に繋げて、社内全体に最適化を目指したことで制度を上手く現場に浸透させることができました。

また、新規採用者を募集する際にも、当時は週休3日制度を導入している企業が少なかったこともあり、求職者に当社の働きやすさをアピールし、人材確保につなげることもできました。

制度導入後も反響は大きく、応募者数や定着率、社員のモチベーションの向上にもつながっています。実際に、週休3日制度や短時間勤務制度を利用した社員が課長や部門長などのマネジメント職として活躍しています。柔軟な働き方でもマネジメント職としての役割が担えることを示した良いロールモデルを提示できたこともあり、社内での働き方改革をより一層推進することができました。

「心の生産性向上」を重視した職場環境づくり

社員が安心して働ける職場環境づくりのため、マネジメント職や工場長が1on1でサポートしています。また、業務内容に基づく評価制度を通じて「共創意識」を高めることで、部署を問わずに協力し合う「お互い様」の組織風土を築いています。

当社には、「おいしい菓子を作るためには、菓子づくりに関わる人が幸せに働けること」という理念があります。その実現のために、働く人の「心の生産性向上」を重視し、逆三角形の「心の組織図」による意識改革を展開しています。「心の組織図」とは、下図のように下層が上層を支える逆三角形組織の構造となっています。経験値のある上席者が、一般社員の部下や後輩といった弱い立場の人たちを精神的に支えることで「心の生産性」が向上します。なお、「具体的な生産性(数字)」と「心の生産性(想い)」の両輪で進める組織体制が重要であるため、当社では、さらに持続可能な組織運営とするため、2022年から誘因(貢献意欲)を「逆三角形組織」の支えとする「四角形組織」への再編成を進めています。

今後も一人ひとりの価値観に寄り添う企業文化を醸成し、PDCAサイクルによる検討を進めながら、持続可能な職場環境づくりに努めていきます。

株式会社中尾清月堂

  • 従業員数 91名
  • 〒933-0956 高岡市宮田町2-1
  • 設立:1870年
  • 事業内容:和洋菓子の製造・販売
  • https://nakaoseigetsudou.jp/