取組事例紹介

介護人材の定着につながる職場環境づくり

#キーワード

人材の確保・定着 ICT化による負担軽減

社会福祉法人海望福祉会

魚津市及び富山市において、特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、障害者支援施設などを運営しています。長く働きやすい職場づくりのため、人材の確保や定着につながるように介護現場でのICTの導入や、ユニバーサル就労の推進、外国人材の雇用など、積極的に職場環境の整備や業務改善を進めており、令和6年度には、「介護職員の働きやすい職場環境づくり厚生労働大臣表彰奨励賞」を受賞しています。働き方改革の取組みについて、理事・総合施設長の大﨑さんに伺いました。

職場に「定着」してもらうために

2006年頃から人材確保に向けた課題が見え始め、「あんどの里」における高齢者と障害者の共生型施設の増築のタイミングで、本格的に働き方改革の推進に取り組みました。

働きやすい職場づくりには、人材の確保だけでなく、職場に定着させ、育成しながら長期間働くことができる環境を整備することが重要です。そのため、業務改善のためのミーティングを月に1回開催し、職員と一緒に問題点や解決法を洗い出して、迅速な対策を講じています。また、職員のキャリアパスの策定やフォローアップ研修の面談を通じて、定期的に、現場の課題や職員の日頃の悩みなどを確認しています。

長期的に職場に定着してもらうには、離職の防止に向けた対応も重要です。職員が退職の意向を示した際には、必ず、面談でその理由を把握し、復職につながるような改善策を提案します。退職に至る前にも、職員のメンタルヘルスに懸念があれば、メンタルのフォローや人間関係の改善、人事異動などにより、職場のリーダーを通じて迅速に対処しています。

また、育児中の職員の定着につなげるため、正職員と同じ待遇で最大2時間の時短勤務が可能な短時間正職員制度を設けています。そのほかにも、正職員(フルタイム)、短時間正職員及びパートタイム職員のいずれかで勤務形態を変更できる制度や、男性職員の育児休業取得の推進、延長保育料の支援(全額法人負担)など、職員の育児と仕事の両立支援に努めています。

これらの取組みもあり、入社1年目の正社員の離職率は、2020年度から5年連続で0%、3年目の離職率も2022年度から3年連続で0%を維持できています。

ICT化による介護現場の負担軽減

人手不足に伴う職員の負担軽減のため、介護現場のICT化にも取り組んでいます。独自の介護記録システムを開発してタブレット端末を導入したことにより、一度の入力作業でそのほかの多くの記録業務を省略できるようになりました。その結果、記録業務のための残業がなくなり、本来の介護業務に専念できるようになったため、職員の働く意欲も向上しました。

現場で導入しているシステムは、実際に使用する職員の声を反映し、事業所ごとに機能のアップデートも行っています。現在は、システムと連携してインカムやPHSで通話できるように改良しており、今後は、音声入力の導入も検討しています。また、ケアプランの作成も自動化したことで、作成時間の大幅な短縮や時間外労働の削減につながっており、将来的には、勤怠管理システムとの連携も想定しています。

そのほかに、腰痛による離職の防止や介護業界のマイナスイメージの払拭のため、リフトなどの腰痛予防機器を導入したほか、見守り支援システムなどの最新設備も整え、職員の生産性の向上だけでなく、利用者の安心・安全にも配慮したICT化に努めています。

なお、現場のICT化を推進しながら、あえてアナログな運用を取り入れていることもあります。毎日の各事業所からの報告は、電話で直接会話することで、職員との円滑なコミュニケーションを図っています。

人材不足を補完するユニバーサル就労と外国人材の活用

人材不足を補うため、当施設では、ユニバーサル就労に取り組んでいます。ユニバーサル就労は、生活困窮者や障害者、就労する意欲はあるが病気等で働きづらい状況にある人など、社会的に支援が必要な人たちに社会参画の機会を提供する取組みです。施設利用者の生活支援やその関連業務を担ってもらうことで、職員が専門の介護業務に専念できるメリットもあります。

また、外国人材の雇用も積極的に進めています。現在、ミャンマー出身者など7人が在籍し、人材育成や家賃補助の支援などにも取り組んでいます。

職場の定着につながる人材育成と今後の課題

離職の防止と職場への定着に向けた人材育成にも努めています。外部コンサルタントによる「福祉プロ養成研修」のほか、新人の育成には、ベテラン職員がマンツーマンで指導する「プリセプター制度」を導入しています。職員によって採用のタイミングや雇用形態、業務内容などもそれぞれ異なるため、複数のインストラクターを配置し、情報共有を徹底しています。育成プロセスも途切れることなく進行できるので、職員の安心感も高まります。

今後も人材の確保と定着が重要な課題です。人材不足の課題は介護・福祉業界だけの問題ではないため、採用時に介護・福祉の仕事を選んでもらえるような魅力ある職場づくりを進めていくことが大事です。今後も職員のワークライフバランスを尊重し、多様な人材が長く働くことができるような職場環境の整備と日々の改善に努めていきたいと考えています。

社会福祉法人海望福祉会

  • 従業員数 180名
  • 〒937-0061 魚津市仏田3468
  • 設立:2001年8月
  • 事業内容:特別養護老人ホーム、デイサービス、有料老人ホーム、障害者支援施設など、高齢者及び障害者への多様な福祉サービス
  • https://www.kaiboufukushi.com