取組事例紹介

職場復帰が当たり前になるよう多くのケースに対応

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リサイクル女子(リサ女) メンター・エルダー制度 女性技術者ミーティング

株式会社HARITA

株式会社HARITAは2012年から働き方を見直し、性別、世代にかかわらず全世代の社員が働きやすい職場環境を整えてきました。2023年8月に岸田文雄首相(当時)が見学に訪れた際には、新幹線の部品に使われるアルミのリサイクル素材とともに、女性の活躍が首相官邸のYouTubeで紹介され、全国から注目を集めました。2024年7月には「ハリタ金属」から社名を変更し、グローバルな企業を目指しています。「女性リーダー」として活躍する経営管理本部総務グループの皆さんにお話を伺いました。

「働き方改革」を推し進め「働きがい改革」へ

3代目社長の張田真が就任(2010年7月)して以降、働き方改革への意識が変わりました。2011年に人事部を設立し、2012年に社内で無記名のアンケート調査を実施したところ、残業が月80時間以上にも及ぶ社員がいること、有給休暇がほとんど取れていない社員がいることが分かり、人材が定着しない原因が明らかになりました。そこで、2013年から2年間で40人を採用し、採用を強化するとともに、2016年に人事考課制度を導入、人事制度の明確化にも取り組みました。

およそ10年間の働き方改革により、2024年では有給休暇の取得は118.8%、残業時間は月平均13時間、育児休暇取得率は女性が100%、男性は71.4%となっています。女性管理職は30人中4人で13.3%と製造業の全国平均2.9%を大きく上回っています。また、副業解禁、嘱託社員の年齢の上限撤廃、完全週休2日、 DX化による業務改善なども実現しました。

当社は「働き方改革」をどんどん推し進め、現在は「働きがい改革」に入っています。働くことで人生は豊かになります。10代から70代までの社員全員が働きやすい環境を整えることで、社内全体で柔軟な働き方ができています。今後は有給取得率90%以上を維持し、男性の育休は段階を踏んで80%以上の取得へ。女性技術職の採用割合を20%以上にしたいと考えています。

育休を取る前には本人・人事担当者・上司が面談

 働き方改革の成果により、当社では第二子、第三子が生まれる社員が多くなりました。子育て世代の支援として次のような取り組みを実施しております。①育休を取った男性社員を取材して社内報に載せ体験を社内に紹介します。②育休を取る前には本人と人事担当者、上司の3者面談を行います。③育休の間は代替スタッフ(派遣社員)を雇用することにより、育休取得前の部署への復帰や復帰後の時短勤務がスムーズになり、周囲の社員への過度な業務負荷がかからないようにしています。職場復帰が当たり前になるよう多くのケースに対応してきたので、女性育休は当たり前で男性育休も取得できる風土になってきました。

 また、2022年には新入社員に1人ずつに寄り添う「メンター制度」を始めました。ざっくばらんな相談が出来るよう別の部署の先輩社員が最初の3カ月は月に2回、次の3カ月は月に1回、勤務時間内に新入社員と面談し、その結果を双方の上司に報告し、何かあれば社として早めに対応することにしています。2024年からは「エルダー制度」も開始しました。エルダーは、同じ部署の先輩が教育担当となります。新入社員が数年後にメンターやエルダーを務めることで、支える側の社員が指導によって成長できるメリットも生まれ、働きがいにもつながっています。

 働き方改革に関する取り組みは社外からも認められ、「とやま女性活躍企業」「イクボス」「健康経営優良法人」「ユースエール」「ベビーファースト」「くるみん」などの外部認証を取得しています。2023年8月に岸田首相が当社を訪問された後には「女性を積極的に登用している」との感想をいただき、「若い女性ら若年層が地方で生き生きと活躍できる社会につながるよう取り組みを進めたい」との言葉をうれしく感じました。

「リサイクル女子(リサ女)」を広めよう

 社外の学びの機会を積極的に活用しています。「次世代女性リーダー育成講座(中部WIN)」には2019年の2期から、3期、4期、5期、7期と5人が続きました。参加した社員は「自分らしく働き、成長するロールモデルとなる方と出会い、切磋琢磨できる学びがあった」と話しています。「煌(きら)めく女性リーダー塾」には2022年から毎年参加しています。「いろんな立場の方が参加しており、葛藤や意見について聞けてよかった。目的や課題を確認し、ステップアップするイメージができた」などの感想があがり、社歴の浅い社員でも社内外の女性リーダーと交流することで意識改革につながっています。

 さらに、当社では「リサイクル女子(リサ女)」(女性技術者の愛称)の活躍を進めております。その一環として、2022年8月から1年に4回程度、女性技術者による女性技術者ミーティングを開いています。アシストスーツを体験試着し機能性についての検討や、Sサイズの手袋を提案するなど女性が働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。また、女性技術者ミーティングではリサ女普及活動以外にも、女性採用を狙ったハローワークの求人票について改善案を話し合うなどしています。自らのアイディアをどんどん実現し、成功事例となることは「働きがい」につながります。

社員に寄り添う働き方・働きがい改革がリサ女の活躍を後押し!

「複合的に関わり合いを持つこと」と「取り組みを継続し発展させること」が“HARITA流”の働きがい改革であり、女性活躍推進と言えるでしょう。成長段階やライフステージに応じたサポートが入社後3年間での離職率0%という数値にも表れています。また、女性社員にとっては社外での学びを社内で実践し、そして成功事例を自分たちで社内外に伝え反響を実感するという好循環に接する喜びもあるでしょう。この好循環が生まれた背景には10年以上にわたり粘り強く取り組んだ働き方改革があり、リサ女の活動の礎となっています。成功体験を重ねたリサ女たちの今後の活躍が楽しみです。

コンサルタント:岡本 尚美

株式会社HARITA

  • 従業員数 311名、平均年齢43.6歳、平均勤続年数13.3年、管理者数30人
  • 〒939-0135 富山県高岡市福岡町本領1053-1
  • 設立:1975年8月(創業 1960年6月)
  • 事業内容: 産業廃棄物及び一般廃棄物の収集運搬・中間処理や製鋼原料の回収、家電・自動車・二輪車等のリサイクル事業
  • https://www.harita.co.jp/