取組事例紹介

完全週休2日制の実現に向けた業務の効率化と働きやすい職場環境づくり

#キーワード

完全週休2日制 ICT化による業務の効率化 フレックスタイム制度 テレワーク

大高建設株式会社

黒部川流域における治水・砂防工事を軸とする総合建設事業に加え、新事業や地域貢献に取り組む『大高建設』。中小規模の建設業のトップランナーとして、「安全最優先」の職場環境の整備やICTによる技術革新に挑戦しています。働き方に関する様々な制度や女性活躍の取組みについて、専務取締役の大橋さん、総務部長の松島さんにお話を伺いました。

建設業における完全週休2日制に向けた取組み

創業時から受け継がれるチャレンジ精神で、新しい試みや最新の技術を積極的に取り入れる企業風土があります。働き方に関しても同様で、「企業は人なり」の考えを大切に、誰もが働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。

当社の施工現場の多くは、主に黒部の険しい奥山です。砂防堰堤の工事や発電所のメンテナンスなどを担う従業員は、原則、現場の宿舎に泊まって働いています。そのような従業員の安全安心な職場環境の整備やワーク・ライフバランスの向上だけでなく、離職の防止や人材の確保にもつなげるため、2019年から完全週休2日制に取り組んでいます。当時は、地方の中小規模の建設業ではあまり実施されておらず、取り組んだ時期は業界内では早かったと思います。導入時は、取組みを懸念する従業員の声も多く、むしろ1日の残業時間が増えてしまったこともありました。しかし、従業員による創意工夫やICT化などにより、少しずつ残業時間を減らすことができました。

リモート環境の構築やICT化が制度の実現を後押し

コロナ禍を契機にリモート環境の整備を進め、クラウドサービスの活用やペーパーレス化を推進しました。これらの取組みは、完全週休2日制を推進していくうえで重要な要素となっています。スマートフォンやタブレットPCを活用した遠隔地からのチャットやリモート会議を積極的に導入したほか、社内の稟議手続きを電子化するなど、業務の効率化を図りました。また、工事現場では、ICT対応の測量機器やドローンの導入、VR技術を活用した現場確認などを通じて、作業効率の向上や負担軽減、安全性の向上に努めています。さらに、将来の無人化施工を見据え、遠隔操作システムの試験導入も進めています。令和6年度には、災害で法面が崩壊し、土砂撤去が必要となる危険な作業において、作業の安全性向上とリスクの軽減を図るため、バックホウ(掘削積込機械)のオペレーターが運転席に乗らず、遠隔操作による施工を試みました。

完全週休2日制を実現できた背景には、発注業者の理解と協力もあります。当初は、制度の実現のために代休や振替休日を利用し、1週間に2日の休みを確保する体制を整えながら、発注業者の理解に努めました。また、現在は、国が推進する「週休2日取組企業宣言」を明示し、発注業者に協力を呼びかけています。

フレックスやテレワークで多様な働き方を推進

当社の経営方針に、新3K(給与・休暇・希望)と独自の新3S(スマート・サスティナブル・セーフティ)を盛り込み、より魅力ある職場づくりを目指して多様な働き方を進めています。「育児フレックスタイム制度」は、1ヵ月単位で、始業、・終業の時刻を従業員の決定に委ねる制度です。導入当初は、制度の対象を「小学校3年生以下」の子供がいる従業員としていましたが、現在は「小学校6年生以下」に拡大しています。

また、育児に限定しないフレックスタイム制度もあります。一般職を対象とした1ヵ月単位の運用で、所定労働時間は総合職の8時間に対し、一般職は7時間30分となっています。基本的には、各自が決めた勤務パターンに従って働いており、必要に応じてフレックスタイム制度を活用しています。

コロナ禍を契機に導入したテレワークは、現在も大雪の時などによく利用されています。それ以外にも、富山市内にある会社のオフィススペースでテレワークを行う育休明けの従業員がいたり、自宅からミャンマーの現地法人とリモートで仕事をする海外事業の責任者がいたりするなど、テレワークの活用により、誰もが働きやすい職場となるよう取り組んでいます。

休暇制度の取得促進や福利厚生制度の充実

年次有給休暇は、法定の入社後6ヵ月後ではなく、入社直後から利用でき、取得率は、2022年度は74.6%、2023年度は73.5%と2020年度に設定した目標の70%を達成できています。また、高校生以下の子供がいる従業員を対象に3日間の有給休暇を付与する特別看護休暇や、配偶者の出産時に利用できる特別休暇、工事が完了した際に最大5日間付与される特別休暇なども設けています。

従業員の福利厚生制度については、現場や本社に3人の産業看護師を配置し、従業員の健康と安全に配慮した工夫をしています。このほか、子供の小・中・高校入学時及び成人の際のお祝い品の贈呈や社長と若手従業員が自由に意見交換する社長塾、女性従業員等による制服のプロデュースなど、従業員の意見を積極的に取り入れ、福利厚生制度の充実を図っています。

介護制度の整備や女性の管理職登用が課題

現時点で介護に関する休業・休暇制度を利用している従業員はいませんが、高齢化社会の進展により、将来的には利用者が増加すると見込まれます。このような状況に備え、事前に介護に関する制度や環境整備を進めていく必要があると考えており、将来的には、従業員が安心して仕事と介護を両立できる職場環境を整備することを目指しています。

また、女性活躍の推進も重要な課題の一つです。当社は、女性管理職の増加に取り組んでおり、管理職を目指す女性従業員が出産や子育てで不利にならない体制を整え、積極的に支援していきます。

当社の最優先事項は「安全」です。一つひとつの工事の生産性を向上させながら、無理なく、バランスの良い受注を戦略的に行うことも、働き方改革の工夫として重要と考えています。

大高建設株式会社

  • 従業員数 74名
  • 〒938-0282 黒部市宇奈月温泉633-1
  • 設立:1954年4月
  • 事業内容:総合建設業(土木工事、建築工事ほか)、工事の測量・設計及び監理、不動産取引業、再生可能エネルギー事業、海外事業、デジタルコンテンツ事業、温泉施設の管理運営
  • https://o-taka.co.jp