取組事例紹介

長時間労働抑制とやりがいのある環境づくり

#キーワード

どこでも仕事ができる環境づくり 柔軟な働き方を可能とした多様な制度 社員の自己啓発支援 現場と事務の行程等を見直し効率化

株式会社アイペック

物を壊さずにその品質や安全性を判断する「非破壊検査」を、東海北陸で唯一6検査種目に対応しており、近年はセンサーを活用したIoT常時モニタリング事業も展開しているアイペック。社外事業所(現場)での業務や土日勤務も多い中、長時間労働抑制への取組みについて、代表取締役の東出社長と、取締役・総務部の荒木部長にお話を伺いました。

●誰でもどこでも仕事ができる環境を模索

弊社は事業の性質上、現場での業務が多く、また、業務終了後スピードをもってお客様へ報告書を提出する必要があります。以前は、遠方での業務や現場の朝礼への参加要請があった場合、現場の始業時間に合わせ、会社に早朝出社し、現場業務終了後は帰社して報告書を作成、提出後に帰宅という長時間労働が常態化していました。このままでは社員の健康を守れず継続して働いてもらえないという危機感と、時間外労働の上限規制をきっかけに、社員のみなさんが健康でいきいきとやりがいをもって仕事ができる環境くりを手掛けました。 

まずは、固定席を持たずに自由に席を選んで働く「フリーアドレス制」を新社屋移転を機に導入しました。全社員にタブレットPCとスマートフォンを支給し、ペーパーレス化とクラウドなどの外部サーバーを利用しテレワークが可能となりました。これは、現場や出張先、自宅など誰でもどこでも仕事ができる環境づくりと、介護や育児などを理由にやむなく離職する社員をなくしたいという思いから、役員会で決定しました。 

当初は社員の理解が得られないこともありましたが、2020年の記録的大雪時に、自宅から出られない人もいる中で、この体制を導入していたおかげで約80%の社員がテレワーク勤務ができました。このことで、フリーアドレスから派生したテレワークの良さが多くの社員に浸透したと感じました。

●柔軟な働き方を可能とした多様な制度

直行・直帰をすると会社から現場との直線距離に応じて手当を支給するスマートムーブ制度を導入しました。直行・直帰で移動時間を減らすことによって、長時間労働を低減し、お客様により良いサービスを提供する時間、資格取得などの自己啓発する時間など、社員にとってやりがいをもてる時間を増やし、仕事と生活の調和の実現を目指しています。時間外が減って収入が減る分を手当として支給し、社員からも「朝の時間にゆとりができた」など好評な制度となりました。

さらに移動距離の短縮により、タイヤの摩耗や燃料の消費量も減ることから、CO2の削減にも繋がり、SDGsにも貢献できていると思います。

また、柔軟な働き方に対応するため、フレックスタイム制度(コアタイムなし)を導入。1日の労働時間を固定化せず1ヶ月の総労働時間で定めることによって、社員はその総労働時間の範囲内であれば各労働日の労働時間を自由に取り決めできます。申請手続きは、事前に上司に相談して許可が出れば可能としました。 

当初は法定労働時間の枠を超えないよう3ヶ月清算としていましたが、時間管理が負担となり、かえって思うような働き方ができない社員がでてきました。そこで、社内の声やお客様の声を聞き、年間休日などを見直すことによって、1ヶ月清算に移行しました。 

そのほかには、社員の休息と睡眠時間を確保するため、「9時間の勤務間インターバル制度」や、介護や育児、通院などで利用しやすい「1時間単位で取得できる時間有給制度」を導入。これにより、社員の生活と業務との調和が図られ、効率的かつ柔軟な働き方ができるようになりました。

●自己啓発がしやすい環境を支援

弊社の社員は、資格取得が必須です。自己啓発支援制度を導入し、資格取得を後押ししています。毎週水曜日に設けているノー時間外デーの定時後に、1フロアを開放して学習できる場を提供し、自習をすると1回2,000円の自己啓発支援手当を支給しています。この取組みにより、資格取得の学習を習慣化できる環境を整え、制度を利用した資格取得をめざす風土を醸成、その結果、目覚ましく受験件数が増加し、合格率のアップと仕事への意識向上、人材育成に繋がりました。


●健康でいきいきとやりがいをもって仕事ができる環境を

テレワーク環境とスマートムーブ制度導入により、出張先の現場からデータ整理や報告が可能となり、業務効率が向上しました。年間休日も2020年の111日から2023年には113日とし、有給休暇消化率は、2020年度67.2%から2022年度88.3%と向上しています。

そのほか、男性の育休取得も推進しており、育休取得後に社員インタビューをし、「パパの育児休業体験記」を作成して動画広報しています。有給休暇や育児休暇、介護休暇などを取得しやすい環境づくりをすすめています。

また、月2回総務メンバーが社員に声かけをし、困ったことや気づいたことなどをヒアリング、グループウェアにヒアリング内容を匿名でアップする「声かけ運動」をしています。すぐに改善できることはスピードをもって対応していきます。 

これらの改革は、社員が健康でいきいきとやりがいをもって仕事ができる環境をつくることを目的としており、風通しがよく、社員のみなさん一人一人の強みをより発揮しやすい風土づくりをすすめています。

●今後に向けての取組み

現在、シン・アイペックプロジェクトを実行しており、そのひとつ、現場・事務の改革プロジェクトは、2年計画で現場と事務のプロセス等を見直し生産性をあげて、社員全員一人残らず時間外を削減し、お客様へよりよい技術サービスを提供するメンバー、チームを増やすプロジェクトです。現在、年間平均で月30時間ですが、閑散期と繁忙期では差があるため、繁忙期であっても時間外労働を月45時間以内で法令順守することを目標に取り組んでいます。 

また、ペーパーレス化、電子回覧・電子承認を進めることによって、どこでも仕事ができる環境づくりを加速させたいと思っています。 

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も試験的に進めており、将来的に社員には、より高度な仕事に時間を使い、成長と生産性の向上をはかり、自分ブランドの確立を目指していきたいと考えています。 

今後さらに、「社員が健康で公私ともに充実した日々を送れる」「社員が誇りとやりがいをもって、お客様に感動を与える仕事をする」ことを目指し、働き方改革を進めていきたいと思います。

株式会社アイペック

  • 従業員:76名
  • 〒931-8453 富山市中田1丁目113-1
  • 設立:1976年
  • 事業内容:発電所・化学プラントなどの非破壊検査、橋梁やトンネルなどの点検・調査、学校や官公庁などの外壁調査
  • https://www.ipec-com.jp/