国内外の企業の社員教育に
採用されるマインドフルネス

 本日は「マインドフルネス」の初級コース。はじめて学ぶマインドフルネスを紹介します。
 マインドフルネスとは何か。これはアメリカで始まりました。GoogleやApple、NIKE、P&Gなどの大手企業の社員教育としても採用されています。
 マインドフルネスには次のような定義があります。
 「今、ここでの体験に意識を向け、五感で感じ、とらわれのない状態で、ただ観ること」。
 これがマインドフルネスの定義ですが、少々分かりづらいかもしれませんね。簡単にいうと、伝統的な瞑想法から宗教性を排除したものです。瞑想というと日本ではお寺の座禅がイメージしやすいと思います。あの座禅のイメージから宗教性を排除して、自分の心と身体の健やかさを保つ目的のために行います。ストレスを減らし、集中力がアップするという理由から、企業で採用するところが増えています。このマインドフルネスには、メリットが4つあります。

  1. 相手の感情や、ハードな環境に飲み込まれない
  2. ネガティブな感情を、引きずらない
  3. 心身両面の疲労回復
  4. 集中力アップ

ポイントは「五感で、感じ」
やさしく「見守る」こと

 マインドフルネスは1種類ではなく、多くの種類があります。今日はこの初級コースの中からいくつか紹介していきますね。いずれも自分の内側、身体の内側に意識を向けて集中します。身体の内側とは、具体的には呼吸や身体の中の感覚。ちょっと肩が凝っている、胃が重い軽いなど、身体の内側に意識を向けて集中する方法です。
 上手に行うためのポイントは、まず「五感で、感じる」こと。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚(皮膚感覚)です。我々は日常生活では視覚優位になりがちですが、それ以外の感覚も十分に利用して感じていきます。普段我々は仕事をしているときは常に考えていますが、マインドフルネスをしている数分間だけはその考えを脇に置いて、感じることに切り替えます。要は考え過ぎの脳を休めます。
 この考えるということをちょっと横に置くというのが、なかなかできない。座禅でも「無になる」といいますが、無になるのはなかなか難しい。では、どうすればいいのか。「感じる」ことで脳のスペースを埋めていきます。「肩が凝っているな、息を吸ったり吐いたりしているな」と感じていくとその“感覚”で脳が埋まっていくので、考えるスペースがなくなっていきます。より深く、よりゆっくり、より繊細に感じていくと、効果が高くなります。ポイントの一つ目は「五感で、感じる」です。
 そしてやさしく「見守る」こと。少し遠くからリラックスして、自分が今感じているものを見守るようなイメージ。仕事の時はいつも分析し、何か問題があるとそれを何とかしようとするのが我々です。しかしマインドフルネスを行っているこの数分間だけは、それを行いません。好奇心、探検心をもって、今、身体がどんな呼吸をしているのか、五感で感じていることがどのように一秒一秒移り変わっていくのか、その変化を優しく見守るようにします。まるで遠くの山をぼーっと眺めるような視線、まなざしで行います。武道などでは「遠山の目付」とも呼ばれ、古来から使われる“涼しい集中法”です。

雑念多く、無心になれなくても
「気づいて」「戻れば」OK

 よく「雑念が多くて、無心になれないのですが…」という質問をいただきます。雑念が出てくるのは人間の脳として、自然なことです。これを「マインド・ワンダリング」(心の彷徨い)といいます。雑念で心がさまよったら、それに気づき、呼吸などの身体感覚に戻りましょう。「気づいて」「戻る」を繰り返していけば、雑念はいくら出てもOKです。
 そして常に「今、ここ」の感覚に戻ります。心は過去や未来、他の場所にさまよいがちです。心がさまよったら「ああ、さまよっていた。雑念が湧いていた。さあ戻ろう」と気づいて、戻ればいいだけです。まじめな方は「雑念が湧いてきてしまった。ダメだな」と否定するのですが、そのようにすると却って雑念は静まらない傾向があります。ですから雑念が出てきたら「そう思ったんだね」と受け入れて、「じゃあ、呼吸に戻ろう、感覚に戻ろう」と心の中で、自分にやさしく声をかけてあげてください。

「セルフ・コンパッション」で
否定しない。あるがままを眺める

 雑念が出たときにダメだし、否定をする代わりに、自分にねぎらいの言葉をかけてあげる。それが「セルフ・コンパッション」です。セルフ=自分に、コンパッション=慈愛の心、思いやりを持つ、ことです。自分にバツをつけそうになったらねぎらいます。「気になっているんだね」などの言葉を自分にかけてあげます。例えば今日食べたお昼のメニューをぼんやり思い出していたら、「お昼のメニューが気になったんだね」「肩が凝っているな、ダメだな」と考えていたら、ダメと思わずに「肩が凝るほど頑張っていたんだね。お疲れ様」とねぎらっていく。自分に慈愛の心をもって、優しくねぎらう。これを行うと雑念が減って、マインドフルネスをとても深く上手に行うことができます。否定をしない。あるがままを眺めるということです。

多種多様なマインドフルネス法
自分にあうものを見つけて

 では実際にやってみましょう。一種類でなくどうして何種類もやるのかというと、個人差がとても大きいからです。今日は何種類かご紹介するので、自分に合ったものを一つ二つ見つけてください。それだけを持ち帰っていただければOKです。全部やらなくて大丈夫。いろいろ体験していただくので、自分に合うものを見つけてください。

マインドフルネス・初級コース

  • ボディ・スキャン法(1)「1分リラックス」法
  • ボディ・スキャン法(2)「体内感覚」法
  • イーティング・メディテーション法
  • 呼吸フォーカス法(基本形)
  • サウンド・メディテーション
  • ムービング・メディテーション(1)「肩ほぐし」編
  • ムービング・メディテーション(2)「首ほぐし」編
  • 川のせせらぎ法

~導入方法~

 まず部屋の照明をちょっと暗くしてください。静かな空間で行いますのでスマホなどをお持ちの方は音をオフにお願いいたします。
 椅子の座り方は、椅子の少し前の方に腰をかけて、背中と椅子の背もたれに少し隙間を空けておきます。足、膝は腰幅程度でもいいですし、楽に足が落ち着くところに置きましょう。手は足の上、太ももの上の楽な位置。手のひらを天井に返しておいた方が肩の力は抜けますが、落ち着かない方は手のひらを下にしてもOKです。

 楽な姿勢で座り、軽く目を閉じていきましょう。目を閉じた状態で口を大きく開けてから、緩めます。頬の緊張が取れるのを感じます。まぶたを軽く開いてから、ふわりと閉じます。目の緊張が取れるのを感じます。目を閉じたまま「遠山の目付」をします。焦っていた心が落ち着くのを感じます。ゆったりとした自然呼吸3回ほど。心と身体の緊張が解けていく様子を、気持ちよく感じられていますでしょうか。

※導入部分と終了部分の間では、各マインドフルネス法ごとに実践方法が異なりますが、ここでは割愛します。

~終了方法~

 それではゆっくりと、意識を今いるこの部屋に戻していきます。上半身を左右に揺らしていきましょう。キリのいいところで、中央で動きを止め、時間をかけて目を開きます。一呼吸。「瞑想を終えます」と、心の中で自分に言って終了します。

マインドフルネスの全てのやり方に共通するのは「五感で感じ、とらわれのない状態で、ただ観ること。これを意識してください。

今日はいろいろな種類のマインドフルネスをご体験いただきました。ご自分の心身が最も心地よく感じた方法を1つ2つ選んでお持ち帰りになって、日々の生活のすきま時間に、どうぞ実践してみてください。